こじらせ雑記

三十路チビデブ独身無職子供部屋おじさんはこれから人生をどう歩むのか。 好きな事、思った事をコンプレックスに乗せて吐き出します。

現場猫の面白さから考える、日本の製造業の現実~製造現場の安全と品質・低賃金とアルコール~

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昨年からにわかに流行している「現場猫」をご存知だろうか。

今回は何故この現場猫が製造現場で勤める人間にとって面白いのか、
考察の上解説していこうと思う。

 

面白いが好き

 

話は逸れるが、僕はお笑いが大好きだ。
小学校の卒業文集で、将来の夢はお笑い芸人と書いているくらい、ずっとお笑いが大好きだ。
いや、お笑いが好きというより、「面白い」が好きなのかもしれない。
面白いことをするのが好きだ。合コンでもモテより笑いを優先してしまう。
お笑いのプロ達が画面上で常に笑いをとっているのを見て、やはり尊敬し、羨望する。

「面白い」は何故生まれるのか。
それは感情が動いている、僕がずっと記事にし続けている「感動」なのだと思う。
この現場猫は製造現場で働く者達の「共感」という感情をぐらんぐらんに揺さぶるのだ。
共感という感情を揺さぶるネタといえば、いわゆる「あるあるネタ」だ。

また話が逸れるが、芸人の中では、面白い事を解説する事は面白くないとされてきた。
ギャグを解説するとつまらなくなる、という理論だ。

しかし昨今、僕の大好きなTV東京佐久間ディレクターの番組「あちこちオードリー」や「ゴッドタン」で
今までダサいとされてきた「お笑い芸人がお笑いを熱く語る」という面白さがフィーチャーされつつあると思う。

これも前の記事で考察したが、やはり熱量だ。
お笑いに懸ける情熱がひしひしと伝わり、感情を揺さぶられる。
そんなお笑い芸人の方達をリスペクトし、僕も熱量を込めて現場猫の面白さを語っていきたい。

 

現場猫とは

 

前置きが長くなったが、本題だ。
まずは現場猫とは何か。

現場猫とは

基本的に「ヨシ!」と現場で指差呼称しているものが多いが、
実際は「ヨシ!」と言ってはいけない、あわや労働災害な状況のことが多い。

dic.nicovideo.jp

 
現場猫誕生までの経緯は上記サイトで確認いただきたい。

 
これらは中小の製造業の会社に勤めていれば一度は経験した事のある、
会社によっては客先や責任者に見られたら首が飛ぶレベルの禁忌行為である。

少し長くなるが、一つ一つ解説していこう。
面倒であれば飛ばして頂いても結構だ。

 

 

ボール盤 製品に穴を開ける機械。
まずはじめに教わるのが「軍手をしてはいけない」という事。
回転しているドリルに軍手が巻き込まれ、最悪指を落とす事故もある。

画像では軍手をつけてツンツンしようとしている。


☆脚立 意外と知られていないように思うが、天板(一番上)に乗ってはいけない。
足元が安定せず転倒する恐れがある。


☆パレットの上に人を乗せてはいけない。
転落事故を起こす危険がある。だが、便利なのだ…。


☆溶接加工時、アーク光を裸眼で見てはいけない。
目が炎症を起こし、目が痛くなる。

これは正直裸眼でやっている人を見たことがない。

こう描かれているということは、やっている人もいるのだろう。


☆ハンドリフトに乗って移動してはいけない。
もう見ればわかると思う。乗れば製造現場のスケボーだ。

 

☆プレス機に身を乗り出して作業してはいけない。

これは毎年死亡事故が発生している。

 

これらの禁忌を高速で「ヨシ!」している姿をポップな現場猫に代行されると、

普段の当たり前がやはりやってはいけないことなのだと再認識させられる。

 

「わかってはいるがわかるわけにはいかん!!」

 

だがそんなレベルの安全上、品質上やってはいけない行為が
通常業務中にまかり通っているという現実をまず理解していただきたい。

現場猫の画像の中に、こんな名言がある。

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このような禁忌を冒しているのは理由がある。
一番の理由は効率がいいのだ。

例えば脚立なんかは一番わかり易い例で、脚立から降りて場所を移動し再び上がるよりも、
危険を冒してでも乗ったまま移動したほうが圧倒的に早く効率がいいのだ。

 

これは大前提として「事故を起こさなければ」という前置きが必要だ。
もし仮に脚立に乗ったままバランスを崩して転倒し当たりどころが悪く、
即病院送りになった場合の作業的ロスは計り知れない。

 

それだけではなく、労働中の怪我は救急車を呼んだ時点で警察が現場検証を行う。
会社はきちんと安全を考慮して作業にあたらせていたのか。

 

これがもしそうでないと判断された場合、労働監督署に話がいき、
最悪の場合安全性が確保されたと立証されるまで会社は業務停止をくらう恐れがある。
そうなれば客先にサービスを提供できなくなる。後のことはご想像いただきたい。

 

とまあ、各作業員はもし事故が起こった場合、
軽く考えただけでもこういった事が起こるとわかってはいるのだ。
だがやはり製造現場でこういった事が守られていないのは

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という現実があるのだ。


これは製造工程の上流に行けば行くほどそういった行いが少なくなっていく。
中小企業に比べて、社員に事故を起こされたときの会社のリスクがあまりにも大きすぎるのだ。


どうだろう、製造現場の経験がないあなたでも、
現場猫の画像を見てそろそろジワジワ来る頃ではないだろうか。

 


中小企業の闇

 

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ここからは少し暗い話になる。

ではなぜこのような事がまかり通ったり、繰り返されたりするのだろうか。
僕はここに、日本の中小企業が抱える闇を感じざるを得ない。

賛否も他の原因も多々あるだろうが、僕はその一つに評価と賃金の問題があると考えている。
ここからの話は僕が実際に体験した話ではなく、あくまで友人から聞いた話だというのを
強く強くつうよおおおおおおおおおおおぅく理解していただきたい。

 

当事者である彼らは、不具合が出ようが出まいが給料に関係ない、
昇進もなければ昇給もない事をよくわかっている。
社員は頑張ろうが頑張るまいが、現状が何も変わらないことを知っている。

いや、悟っている。
それは十数年勤続していても給料が1万円も変わっていないという事実が物語っている。
このような企業の経営者は、一般社員の人件費が上がってほしくない。
下手に頑張られてスキルアップされても給料を上げられないし上げる気もないのだ。
ここに以前の記事で述べたような、人にチャレンジをさせるという環境はない。
むしろチャレンジされて人間的にも技術的にも成長されると困るのだ。
成果に対して見合う賃金が支払えない。

 

では経営者はどうするのか。徹底的に成長できる環境を潰す。挑戦をさせない。
お前らは仕事ができない駄目なやつなんだ、そんな駄目なお前を俺が雇ってやっているのだという意識を植え込ませる。
そうすると社員はどうなるのか。与えられた仕事だけを淡々とこなす機械のような人間が出来上がる。
ここで厄介な事が起こる。人は機械と違ってエラーを起こす。
疲労による体力、精神力、集中力など人間の様々な機能が作業によって摩耗された時、エラーが起こる。
エラーが起きた時、不良や事故が発生する。正に負のスパイラルだ。

 

以上が日本の中小企業が抱える闇、私腹を肥やす家族経営者の実態がある。

 

死んだ目、生きている目

 

もちろん家族経営でも志高く、社員の幸福を願い経営に励んでいらっしゃる方も数多くいる。
そういった企業も、友人は目の当たりにしてきたという。私の友人はね。

 

友人は両経営者の会社の違いをこう語る。
まず何より社員の目つきが全く違う。目が生きている。活き活きしているのだという。
普段死んだような目をしながら働いている人達を目の当たりにしてきたからわかるのだそうだ。
後者の社員は目が輝いているのだという。

 

そしてそのような会社にはきちんと考えて仕事をすれば賃金が上がるシステムがしっかり構築されている。
少しでも、些細なことでもしっかり自分で考え、
改善すれば100円でも200円でも評価してもらえるシステムが出来上がっている。
そしてその小さな成功が自信に繋がり、人として成長する。
仕事が楽しくなる。社員は会社に愛着も湧く。
そこそこの企業に勤めていらっしゃる方からすると驚かれるであろうが、
人事評価システムのない中小企業は星の数ほどある。
しっかり評価をして見える化をしてしまうと、経営者にとって都合が悪いのだ。
あれ、俺全然給料貰ってなくね?と。


その点、人の成長を通して会社が成長できる企業は強いと思う。

 

 

現場猫ストロングゼロ

 

現場作業員の給料は安い。そして現場作業員の毎日の晩酌率はとても高い。
中には毎日アルコールの匂いを漂わせている人もいる。
何故か。この画像に全てが集約されていると思う。

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そんな現場作業員の毎晩のお供、ストロング系チューハイの存在がある。
ストロング系チューハイといえば、安く簡単に酔うことができる、社会問題になりつつある飲料だ。

僕も昔間違えてアルコール9%のコークハイ500mlをグビーっと飲んだ時に、
自宅でベロッベロに酔っ払ったことがある。

 

先週、オリオンビールがストロング缶から撤退したというニュースを見て感銘を受けた。

 

yahoo.jp


ご自分の体調や相性を考えてアルコールを選んでいただきたい。
そういった中で我々としてはアルコール度数以外の価値提案をしていきたい。

 

 

哀愁漂う自虐

 

現場猫とは、製造現場で働く人達の悲観した自虐的な共感に笑いがある、
少し悲しいエンターテイメントなのかもしれない。

なんか最後暗くなっちゃった。でも現場猫面白い。

以上。